不動産投資でよく聞くレバレッジ効果ってよくわからないなぁ。
今回は不動産投資におけるレバレッジ効果のメリット・リスクについて解説いたします。
不動産投資に関わる方であれば、レバレッジという言葉を一度は聞かれたことがあるのではないでしょうか
「不動産投資はレバレッジが効く」、「レバレッジをうまく使うことで投資を成功に導ける」といった言葉は良く目にする一方、その意味を正確に理解されている方は少ないでしょう。
不動産投資ではレバレッジ効果をうまく活用することで、同じ投資予算でもより多くの利益を得ることができます。
この記事では、レバレッジ効果の意味から、メリット・リスクについて初心者の方にもわかりやすく解説いたします。
不動産投資におけるレバレッジ効果とは?
「レバレッジ」の意味とは
レバレッジという言葉はよく「てこの原理」に例えて説明されます。
てこを用いると、小さい力で自力では動かせないような大きいもの、重いものを動かすことができますよね。投資の世界でも同じことを実現することが可能なのです。
「小さい力(資金)でより大きいもの(投資効果)を動かす」、これがレバレッジ効果ということになります。
不動産投資における「レバレッジ効果」とは
不動産投資におけるレバレッジ効果は一言で「少ない自己資金でより大きな利益を得る」ことを指します。
自己資金は、不動産投資をする上で最初に用意する投資予算のことです。
具体的には、少ない自己資金+銀行からの融資(※)によって、当初の自己資金だけでは実現できないような投資効果を得ることになります。
同じ自己資金でも、銀行から融資を引くことでより大きな物件を購入し、より大きな利益を得ることができるということです。
不動産投資におけるレバレッジ効果とイールドギャップの関係について
レバレッジ効果を用いて不動産投資を成功させるためには、①金利を低く、②利回りを高くすることでイールドギャップを高める必要があります。
イールドギャップとはNOI利回りと金利の差のことです。
例えばNOI利回り(実質利回り)が5%で金利が1%だとしたら、イールドギャップは4%です。
- 付き合いのある金融機関の活用
- 不動産業者の紹介
- 金融機関を回り続ける
上記の3つが挙げられます。
②の高利回りの物件については、物件ポータルサイトや様々な不動産業者にあたることで根気強く探す必要があります。
ただし、高利回りであっても
- その利回りでの投資は実現可能か(入居者がちゃんと入り続ける物件か)
- 家賃の下落によって将来の利回りはどの程度になるか
上記の点を判断しなければなりません。
イールドギャップでは「融資期間」が考慮されない点に注意が必要
イールドギャップですが、この指標には1つ問題点があります。イールドギャップでは借入における重要な要素である「融資期間」が考慮されていないのです。
融資期間(何年かけてローンを返済するか)が短ければ短いほど、毎年の返済額が多くなります。先ほど使用した例をもとに考えてみましょう。
- 物件価格 10,000万円
- 利回り 10%
- 年間賃料収入 1000万円
- 自己資金 1,000万円
- 借入額 9,000万円
- 金利 1%
イールドギャップは9%です。
こちらの事例で融資期間が15年の場合、35年の場合それぞれ下記の通りの利益になります。
- 融資期間15年の場合
年間返済額:約720万円 年間キャッシュフロー:約280万円 - 融資期間35年の場合
年間返済額:約348万円 年間キャッシュフロー:約652万円
※どちらも、返済以外の経費を含んでいません。
融資期間15年のように短い場合は毎年の返済が多く、キャッシュフローを得られません。
一方、融資期間35年のように長い場合は毎年の返済額が少なく、キャッシュフローを多く得られています。
同じイールドギャップ7%にも関わらず、融資期間によって、大きく収入が変わるのがお分かりいただけるかと思います。
キャッシュフローが出るのかを確認しましょう
イールドギャップだけでは、最終的な収支はわかりません。
イールドギャップのほかに、融資期間を考慮する必要もあります。さらに融資期間のほかにも不動産投資では数多くの要因で収益が変化します。
- 修繕費はどれくらい発生するのか
- 空室率はどのくらいか
- 毎年の税金支払い額はいくらか
イールドギャップは収益性判断にある程度役立ってはくれますが、イールドギャップが高い=儲かるということではありません。最終的には、キャッシュフローがでるかが重要です。
ある程度感触のいい物件が見つかったら、シミュレーションをしてみましょう提出されたシミュレーションでキャッシュフローが出ているか(毎年の収支が黒字か)、そのシミュレーションが実現可能かどうかを確認してみてください。
不動産投資におけるレバレッジ効果のメリットとは
不動産投資におけるレバレッジのメリットについて二つお伝えします。
メリット① 投資効率の良さ
レバレッジを活用することのメリットの一つ目は、「投資効率の良さ」にあります。言い換えると、自己資金を少なく抑えることで、より効率良く投資規模を拡大することができるということです。
まず自己資金500万円で、利回り6%のマンションを現金購入したとします。
その場合の年間の家賃収入は、500万円 ✕ 6% = 30万円
一方で、自己資金100万円でレバレッジを20倍効かせ、利回り6%の2,000万円の物件を購入したとします。
その場合年間の家賃収入は、2,000万円 ✕ 6% =120万円
とはいえ、融資を利用しているので、返済額を考慮する必要があります。借入金1,900万円を金利2.5%を30年で返済する場合、一年間の返済額は約90万円となるので、120万円(年間家賃収入)- 90万円(年間返済額)= 30万円
つまり、現金500万円を丸々使って投資した手残りと、現金100万円のみでレバレッジを効かせた投資の手残りはほとんど同じになるということです。現金購入した場合は、もう手残りの現金がないのでこれ以上投資規模を拡大することはできませんが、融資の場合には残り400万円を使って更に投資することが可能となります。
このように、レバレッジを上手く利用することで、限られた自己資金をフルに活用して自身の投資規模を拡大させることができる、というメリットを享受することができるのです。
メリット② 高い保険効果
二つ目のメリットは、保険効果が高くなることです。
不動産購入に際し融資を受ける場合、団体信用生命保険に加入できるケースは珍しくありません。
団体信用生命保険とは借入金の返済期間中に当事者が死亡または高度障害になると、借金の返済が帳消しとなり、物件はそのまま遺族が所有できるシステムのことです。
つまり不動産購入を目的として団体信用生命保険に加入するということは、借入金の返済を行わずに物件を所持し、家賃収入が得られるという保険と同様のメリットがあります。
一家の大黒柱に万が一の事態が起きた際に、収入減少による生活苦を回避する有効手段となることも覚えておきましょう。
不動産投資におけるレバレッジ効果のリスクとは
メリットが大きい不動産投資のレバレッジですが、リスクもありますので注意が必要です。
デメリット①:借入リスク
レバレッジを利用することのデメリットの一つ目は、融資を利用することによる借入リスクです。これは不動産投資における最も大きな課題の一つでもあります。
借入リスクとは、簡単にいうと毎月一定額を返済しなければいけないということです。不動産投資においては、毎月の返済額を家賃収入から支払うことになるので、自身が保有する物件が賃貸中であるうちは、特にデメリットにはなりません。
しかし融資を使って物件を購入している場合には、たとえ家賃が入ってこない状況であっても返済しなければなりません。こうなると、毎月の返済が自身の実生活に影響を及ぼすことも珍しくはないです。
この返済額が、月2~3万円ほどであればそこまで危険性はないかもしれません。しかし、レバレッジを効かせれば効かせるほど、毎月の返済額も大きくなり、最悪の場合には返済に追われて自己破産、というケースも起こり得ます。
そういった意味で、レバレッジはマイナスの方向にも働きかねない、ということを良く知っておく必要があるでしょう。こうしたデメリットを回避するためには、物件について良く調べ、空室リスクの低い物件を選定する必要があります。
デメリット②:金利上昇リスク
レバレッジを利用する上での二つ目のデメリットは、金利上昇リスクです。融資を使って自己資金をレバレッジしていく上で、金利はかなり大切な要素となってきます。
例えば、10,000万円の物件を融資期間30年で借入した場合を考えてみましょう。
低金利の1.5%で借りることができた場合には、毎月の返済額は約32万円ですが、もしも金利が3%まで上がると毎月の返済額は約42万円となります。
このように、金利が数%変わることで毎月の返済額は大きく上昇します。更に、デメリット①の借入リスクについては、空室率の低い物件を選ぶことで危険性を回避することが出来たのに対し、この金利リスクについては回避することが出来ません。
レバレッジを効かせる際には金利上昇リスクをしっかりと認識した上で、金利が上昇したとしても余裕を持って返済できる事業計画を立てることが必要不可欠です。
不動産投資でレバレッジをかける前に理解しておくべきこと
不動産投資では銀行からの融資を活用することにより、他人の資本(銀行からの融資)を使うことで、自己資金を極力使うことなく、不動産投資をすることができます。
不動産投資におけるレバレッジとは融資というレバレッジを使って資金を調達することで成り立ちます。
ローン戦略を考えて、自分のプランに合ったレバレッジを考えていきましょう。
誰でも融資してもらえるわけではない
銀行での借入には審査が必要です。
クレジットカードを作成するときに審査があるように、銀行からお金を借りるときにも審査を通過して初めてお金を借りることができます。
不動産投資における融資審査では住宅ローンなどの審査のときと同じく、個人の信用調査がある他、投資物件の調査も行われます。個人の信用調査では、年収だけではなく、勤務先や勤続年数・クレジットカードなどの支払いに遅延がないかといったことを調べられます。日頃から支払いなどには気を付けて、遅延しないようにしましょう。
また、融資にあたり、投資物件についてあなたの考えを融資先の銀行から詳しく聞かれることもあります。数字で見た個人的信用度も大切ですが、銀行の融資担当者は人間です。自信を持って物件情報に自分の考えを加えて伝えられるよう準備をして融資相談に行きましょう。
レバレッジの高さだけで物件を選ばない
不動産投資で一番重要なことは、「空室リスク」を減らすことです。
空室が出てしまうとその部屋は赤字になってしまいます。そのため、空室リスクを減らし、満室を目指せる空室リスクの少ない物件を選ぶ必要があります。
物件探しをしていると「絶対儲かる」などという魅力的な言葉を聞くことがあります。しかし、不動産投資も他の投資と同じく、絶対ということはありません。
不動産投資は経験や知見が必要になります。人の意見を聞くことも大事なことですが、自分の知識を磨き、空室リスクが低く、自分の許容範囲のリスクのレバレッジをかけられる物件を探していきましょう。
一見、レバレッジの高くなる物件は魅力的に見えます。しかし、レバレッジが高いほどリスクが高くなるというデメリットもあります。特に初心者はレバレッジの高い物件に魅力を感じてしまいがちですが、それは非常に危険です。
知識が少ない初心者は、「絶対に儲かる」などという甘い言葉に惹かれやすいですが、一度立ち止まって冷静になることが大事です。
自分のリスク管理をしっかりと見つめ直し、許容範囲のリスクに抑えることが大切です。
不動産投資初心者が大きなチャレンジをするのは危険!
不動産投資の初心者の方が大きなチャレンジをするのは非常に危険です。
不動産投資は、徐々に物件数を買い増ししていき、利幅を増やしていく投資です。
利益の出ている不動産の数が多くなればなるほど、家賃収入を増やすことができます。利益が出ていれば、まず初めに所有した一軒目の不動産の家賃収入を次の物件の購入資金にすることも可能です。
現在、多くの不動産を所有して家賃収入を得ている人も、最初は一軒の不動産のオーナーから始めています。最初から、大きな利益を出そうと思わずに、まずは自分の資金にあった購入できる物件を選ぶことも重要です。
家賃収入を得ると聞くと、マンションやアパートを一棟購入して、一棟のオーナーになるというイメージを持っている人もいるかもしれませんが、自宅と同じく一室からの購入も可能です。
はじめから一棟買いをするなどの大きなチャレンジをするのではなく、手堅い物件を買い増ししていくことから始めて行きましょう。
レバレッジ効果を得るための利回りの目安
レバレッジ効果を得るための利回りの目安について解説します。
レバレッジ効果を得るには、ある程度NOI利回り(実質利回り)が高い物件に投資をする必要があります。
一方で、借入金利が低ければイールドギャップが大きくなるため、NOI利回り(実質利回り)が低くても借入金利が低いとレバレッジ効果は得られることもあります。
また、元本返済額は返済期間が長いほど年間の返済額は小さくなります。
よって、借入金の返済期間は長いほどレバレッジ効果が生まれやすく、短いとレバレッジ効果は生まれにくいという関係にあります。
ここでは、借入金の返済期間は30年と固定して、「NOI利回り」と「借入金利」を変動させること、どのあたりでレバレッジ効果が得られるか目安を検証します。
・借入金利2%の場合のシミュレーション
借入金 | 7,000万円 | 7,000万円 | 7,000万円 | 7,000万円 |
---|---|---|---|---|
自己資金 | 3,000万円 | 3,000万円 | 3,000万円 | 3,000万円 |
総額 | 10,000万円 | 10,000万円 | 10,000万円 | 10,000万円 |
NOI利回り | 4.0% | 5.0% | 6.0% | 7.0% |
NOI | 400万円 | 500万円 | 600万円 | 700万円 |
借入金利 | 2.0% | 2.0% | 2.0% | 2.0% |
借入期間 | 30年 | 30年 | 30年 | 30年 |
年間返済額 | -310万円 | -310万円 | -310万円 | -310万円 |
返済後の手残り | 90万円 | 190万円 | 290万円 | 390万円 |
自己資金利回り | 3.0% | 6.3% | 9.7% | 13.0% |
レバレッジ効果 | なし | あり | あり | あり |
借入金利が2%の場合、NOI利回りが5%以上の物件に投資をするとレバレッジ効果が得られるようになります。
・借入金利3%の場合のシミュレーション
借入金 | 7,000万円 | 7,000万円 | 7,000万円 | 7,000万円 |
---|---|---|---|---|
自己資金 | 3,000万円 | 3,000万円 | 3,000万円 | 3,000万円 |
総額 | 10,000万円 | 10,000万円 | 10,000万円 | 10,000万円 |
NOI利回り | 4.0% | 5.0% | 6.0% | 7.0% |
NOI | 400万円 | 500万円 | 600万円 | 700万円 |
借入金利 | 3.0% | 3.0% | 3.0% | 3.0% |
借入期間 | 30年 | 30年 | 30年 | 30年 |
年間返済額 | -354万円 | -354万円 | -354万円 | -354万円 |
返済後の手残り | 46万円 | 146万円 | 246万円 | 346万円 |
自己資金利回り | 1.5% | 4.9% | 8.2% | 11.5% |
レバレッジ効果 | なし | なし | あり | あり |
借入金利が3%の場合、NOI利回りが6%以上の物件に投資をするとレバレッジ効果が得られるようになりました。
借入期間や自己資金の割合にもよりますが、レバレッジ効果を発生させるには「イールドギャップが3%以上」あることが一つの目安といえます。
まとめ 不動産投資では上手にレバレッジを活用しましょう!
レバレッジはうまく活用することで大きな資産を作ることができるんですね!
メリットだけでなくリスクもしっかりと理解しましょう
不動産投資ではレバレッジを活用することで将来に渡り大きな資産を築くことができます。
ここまで、不動産投資におけるレバレッジの意味と、そのメリット・デメリットについて解説してきました。少ない自己資金を活用して不動産を物件するレバレッジには、投資効率の良さや高い保険効果といったメリットがある一方、借入リスクや金利上昇リスクといったデメリットがあります。
冒頭で述べたように、成功している不動産投資家の多くが、このレバレッジ効果を使って上手く資産を築いていることは紛れもない事実です。
レバレッジのデメリットやリスクをしっかりと認識した上で、そのメリットを上手く活かして投資を行って行きましょう🤗
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